ダバオの小学校でインクルーシブ教育の調査
こんにちは
研究者のdavavaovaoことvaovaoです。
さてさて、ブログでは今までグルメライターぽいことばかりあげてきましたが、今回はいよいよ大学院生らしいことを書きたいと思います。でも、あんまり堅苦しいことは書きません。(堅苦しくなっていったらすみません。)
vaovaoがなぜダバオにいるかというと、ただダバオが好きだからではありません。プロフィールにあるように、ダバオの小学校を回って障害のある子への教育の実態を調査しています。ちなみに、vaovaoの専門はインクルーシブ教育と言って、簡単に言うと障害のある子が一般の学級の中でクラスメートと一緒に教育を受けるというものです。
訪問をしている小学校もインクルーシブ教育を推進している学校です。
ダバオにはそのインクルーシブ教育推進校(SPED CENTERがある小学校)が7つありますが、そのうち一校を紹介したいと思います。
BUHANGIN CENTRAL ELEMENTARY SCHOOL SPED CENTER
Buhanginという地域にある小学校です。こちらの小学校はダバオの中で4番目に大きい小学校で、全校児童数が約5000人で、教職員数が約120人です。日本で考えると、大規模校とかというレベルではありません。
また、小学校と言っていますが、幼稚園(5歳対象)も含んでいます。
というのも、フィリピンの義務教育は「K to 12」と言ってKindergarden(幼稚園)からGrade12(高校)までが義務教育です。
ですので、ここの小学校には幼稚園もついています。
幼稚園1年(K1)、小学校6年(G1〜G6)、中学校4年(G7〜G10)、高校2年(G11〜G12)で、年齢は日本と同じで小学校は6歳から始まります。
SPED CENTERとしての特色
SPEDというのは日本では聞き馴染みがないと思いますが、Special Education(特別支援教育)という意味です。
この学校の特色はSPED センターがあってそこで特別支援学校や特別支援学級の役割があるということです。ダバオの小学校には、日本の小学校だとだいたい特別支援学級が設置されていますが、特定の小学校にしかありません。
<4つのタイプのクラス分け>
1. Regular class(通常学級)・・・ひとクラス50人前後の児童が在籍
2. Receiving class(通常学級に障害のある子どもも在籍するクラス)・・・ひとクラス障害児は2人まで
3. Gifted and Talented class(IQが高い子どもたちのクラスで障害児が在籍する場合もある)・・・ひとクラス障害児は2人まで
4. SPED class(特別支援学校や特別支援学級のような役割)・・・自閉症をはじめとした発達障害、知的障害、聴覚障害、ダウン症、等のクラスがある
3の Gifted and Talented class というのは、各学年約32人の Regular class に比べるとひとクラスあたりの児童数が少なくなっています。このクラスに在籍するためには、テストを受けて各学年の上位に入る必要があります。
授業形態
Regular class は、午前と午後の部があり、午前の部は学年によっては朝の6時から授業が始まります。
例えば、G6(小6)の午前の部は6:00〜11:00、午後の部は12:00〜17:00となっています。
一方、Gifted and Talented class は、例えばG4(小4)のクラスは8:00〜15:00と日本と同じような形態で授業が行われます。
SPED class の子どもたちはというと、その子によって授業形態はバラバラです。共通して言えることは、長時間は学校にいないということです。長くても3時間程度です。
授業の様子
【幼稚園】
<Gifted and Talented class>
驚いたことに、みんなそれぞれ日本の国旗を作ってきてくれて、歓迎してくれました。うれしいですね。日本人が小学校に来たことは初めてで、子どもたちにとって初めての日本人がvaovaoになったようです。
このクラスではほとんどの授業が英語で行われています。
幼稚園も小学校も全教室に国旗とドゥテルテ大統領の写真が飾ってあります。
<Regular class>
このクラスでは、現地語のビサヤ語で授業が行われます。
フィリピンのお金は、お札が1000ペソ・500ペソ・100ペソ・50ペソ・20ペソ、コインが10ペソ・5ペソ・1ペソ・25セント・10セント・5セント・1セントの種類があり、今日はその授業でした。また、サリサリストアー(道端にある小売店)で売っているものを学んだりしていました。
「Y y」を絵の具で塗っているところです。
【小学校】
<Gifted and Talented class + Receiving class>小2
フィリピンの小学校は日本の授業と比べ、グループワークが多いです。グループワークの中で障害のある子もない子も協調性などいろいろ学んでいるように感じます。
放課後に教師が苦手な科目を個別に教えています。
<Regular class + Receiving class>小1
小学校一年生のクラスは6,7歳の子が対象ですが、脳性麻痺の障害を持っている子(10歳)もこのクラスにいます。日本では年齢とともに学年もそのまま上がっていきますが、この学校では、その子の能力に応じた学年で授業を受けます。みんな積極的に発言をして、特に特別視をすることなくそれぞれが接していました。
<Regular class + Receiving class>小6
弱視の子がクラスにいました。今日はテストの日で、テスト用紙の文字が小さく、はっきりと見えないために教師が問題を読み上げていました。
【SPED class】
<聴覚障害のクラス>
喜怒哀楽を表す手話を学んでいます。
他のクラスの子が教室に入って来て、教師に折り紙の折り方を教えてもらっています。みんなで折り紙教室の始まりです。気軽に入ってこれる教室っていいですね。
<視覚障害・ダウン症のクラス>
来年度からRegular classに行くために準備をしている子もいます。この日はみんな名前を書く練習をしています。
<Transition class>
このクラスは学年がないクラスです。20歳の人もいます。日常の洗濯や料理、掃除など生活する上で必要となるスキルを学んでいます。
今日は、揚げないドーナツ作りです。
お菓子作りが好きな人はパン屋さんとかに就職する人もいるみたいです。
ドーナツが完成しました。美味しくいただきました。
<自閉症のクラス>
教師と子ども一対一の授業です。この日は、細かい作業にチャレンジ中です。
<知的障害のクラス>
絵を見て英語で答える授業です。そのあとは、ホワイトボードにそれぞれがスペルを書いていました。
「M」が頭文字の絵を見て答える授業です。そのあと、その子に合わせた課題が与えられていました。「M」の文字をクレヨンで塗る子、ホワイトボードの文字をそのままノートに写す子。
番外編
校舎に出ると、「せんせい〜」や「ありがとう」、「こんにちは」と日本語で話しかけられました。アニメから簡単な日本語を学んだようです。
「彼氏いるの?」「彼氏の名前は?」「好きな映画なに?」「好きなアニメは?」とかまあ質問ぜめにあいました。笑
元気いっぱいでいいですね。
<お世話になった先生たち>
毎日美味しいランチをありがとうございました。
みんなで日本食レストランにもいきましたよ〜
vaovaoの気づき
この学校のSPEDの教師は、みんなが大学の時の専門が特別支援教育で、マスターを出ている教師もいます。SPEDの教師の専門性は高いものだと感じました。
また、通常学級の教師ともよく話し合っているようなところを見受けることが多々ありました。フィリピン人の人柄でもありますが、とてもフレンドリーで上下関係が厳しくなく、いつでも話をしています。ですので、通常学級の教師がクラスの中で障害のある子に対してどのように対応したらいいのかわからないときは気軽に相談できる環境があるように思います。
また、親と教師もよく話しています。低学年は親が迎えにこないといけないということもあり、教師と親は毎日顔を合わしています。その中で、学校での様子や家庭で困っていることはないか、など話しています。
日本で問題になっている、親のモンスター化や教師の精神疾患などのことはここの小学校では起こり得ないことなんだろうなと思います。
問題点としては、SPED class の子どもたちは一日の授業時間が1〜3時間と他の子よりも短いことが挙げられます。この理由として、教師曰く、子どもの数に対して、教師の数が足りないということです。
また、障害のある子がいないクラスの学級担任の障害児に関しての専門性が十分に確保されていないことが挙げられます。
総合的に見ると、この学校では、vaovaoが想像していたよりも、インクルーシブ教育が行われていると感じました。
来週はまた違う小学校に行きます。新たな発見を楽しみにしています。
ばおばお〜